| 研究概要 |
降雨流出系は,一般に確率過程に属するとされている.本研究課題の目的は,サブ流域(山地域規模の中小河川流域)を対象とした洪水予測システムに対して,入力条件(降雨量),モデルパラメータ,初期条件を確率論的に定式化し,システムからの出力である流出量の確率特性(1～4次モーメント)およびその確率密度関数を理論的に推定するところにある.なお,サブ流域とは,二斜面一河道から複数個の単位流域が河道網によって連結された流域のことである.
平成22年度においては,自己相似性を有するMV network, Peano networkの二つのタイプの模擬河道と,これに連結された斜面流出とからなる流域に対して洪水予測システム(集中定数系モデルの分布モデル)を構築し,流出量の確率特性(高次モーメント)を与える理論式を与え,その妥当性をモンテカルロ・シミュレーション法により示した.
入力条件が定常確率過程である場合に,流出量の確率特性と流域面積との関係を検討した結果,流域面積が百数十km^2以下の場合に流出量の確率特性が一定とみなしうることがわかった.上記の結果は,流出モデルを集中化する際の流域面積に関する制限を確率論的に説明する上で有用と考えられるが,ここでは,降雨量のみを取りあげ,それが定常確率過程である場合の解析に止まっている.最終年度には,降雨量の非定常性も考慮した上で,より拡張された方法として,流出量の確率分布形(確率密度関数)を含め,集中化の妥当性を評価,議論しまとめる予定である.
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