研究概要 |
ダム湖は,我が国の水資源として重要な役割を果たしていることから,水質的な管理が重要である.本研究では,湖底からの植物プランクトンの種(たね)の供給に着目して,ダム湖の富栄養化現象の要因解明を目的にする研究を実施した.本年度はアオコの発生(藍藻類の増殖)が比較的顕著な福島県の三春ダム貯水池において,夏期に現地観測を行い,貯水池内の有機物や栄養塩に関わる沈降フラックスの測定を行った.沈殿物を捕捉するために,セディメントトラップを湖内の数地点に設置し,定期的(約1週間)に回収する調査を7月から8月にかけて行った.有機物や栄養塩が湖底へ堆積し蓄積することは,長期的な水質変化に影響を及ぼすとともに,湖底付着藻類の消長とも関連すると考えられるため,本研究の観測により重要な情報が得られたと考えられる.また水工学的な水質対策を検討することが,本研究の目標である.そこで,湖内の流動および水質の解析を行うための,数値シミュレーションモデルの構築に関する検討を行った.湖全体に関しては,貯水池の形状(平面形状および湖底形状)を考慮した湖流の解析を行う必要があると考えられるため,準三次元モデルを用いることとした.また,湖底で増殖した付着藻類が湖水へ巻き上げられ浮遊する過程などを解析するためのサブモデルとして粒子法の一種であるSPH法を用いた解析手法についても試みた.これらの解析では,それぞれで対象とした現象について,概ねの再現性は得られた.しかし,両者の解析はそれぞれ個別に行っていることと,解析精度が必ずしも十分ではないといった点から,実用性を考えると改良の余地があることが分かった.
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