研究概要 |
平成21年度は,(1)気候・地理条件に関する無次元数の抽出,(2)流況曲線のモデル表現と4つのパラメータ同定,(3)モデルパラメータと無次元数の相関解析の3項目に取り組んだ.その結果,(3)において明確な相関が見出せなかった.これは,流域の気候・地理条件に関する無次元数の大きさに対する流況曲線モデルのパラメータの感度が敏感でないことが原因であった.流況曲線の形状は流域の気候・地理条件に応じて明らかに変化しているため,流況曲線を4つのパラメータでモデル化する方法自体に限界がある可能性が高い.そこで,流況曲線形状を特徴付ける豊水量,平水量,低水量,渇水量と,気候・地理条件に関する無次元数との関係を調べる方法を採用した結果,以下の多くの知見を得た.(1)雨の多い湿潤な気候下では,日降水量の変動が大きな流域ほど流量が大きくなる.(2)大起伏,火山性地,シラス台地,砂礫台地が多く分布する流域では低水量や渇水量が大きくなるが,小起伏山地が広がる流域では逆に低水量や渇水量が減少する.(3)「地下水流出酒養に対する貢献度」が大きい土壌が多い流域は流量を増加させる効果が高く,その効果は流量が少ないときにより顕著となる.一方,「貢献度」が小さい土壌が多く分布する流域では,流量が全体的に少なくなる.(4)第四紀層や火山岩の多い流域で低水量や渇水量が多い.(5)水田は豊水量・平水量を減少させ,畑は低水量・渇水量を増加させる. 以上の成果は,土木学会水工学論文集に掲載し,土木学会第54回水工学講演会にて発表した.
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