研究概要 |
本研究は,流況曲線の形状と気候・地理条件の包括的関係を整理し,気候・地理条件から流況曲線形状を推定する方法の確立とその副産物としての全日本地下水涵養ポテンシャルマップの作成に取り組む. 平成22年度は,(1)全日本地下水涵養ポテンシャルマップの試作,(2)日本全国のダム流入量データを対象とした解析の2点に主に取り組んだ.(1)では,「渇水比流量が多いところでは地下水涵養ポテンシャルが大きくなる」という仮定の下,渇水比流量が多くなる気候・地理条件を多く満たす場所をマッピングした「地下水涵養ポテンシャルマップ」を作成した.その結果,年間降水量が多く,標高が高く,第四紀層の地質・黒ボク土壌・畑地が多く分布するところでは渇水比流量が大きくなり,地下水涵養ポテンシャルが大きくなるとの知見を得た.このマップと大規模湧水地点の分布との比較を行った結果,このマップの有効性が期待できることがわかった.以上の結果は,土木学会水工学論文集の第55巻に掲載した. 上記(1)の「地下水ポテンシャルマップ」の作成基盤となったのは西日本のダム流域におけるデータ解析結果であった.このため,「全日本」のマップとして公開するには問題があった.そこで(2)では,日本全国のダム流域データを対象として再解析を行った.その結果,年間降水量が渇水比流量の重要な増加要因であるとの結果は変わらなかったが,地形,土壌,地質,土地利用が渇水比流量に与える影響は(1)とは異なることがわかった.また,渇水比流量に豊水・平水・低水に関する比流量を加えて,流域の気候・地理条件を独立変数とした重回帰分析を行った結果,流域の気候・地理条件から流況曲線形状を高精度に推定できることが判明した.以上の結果は,東北地域災害科学研究の第47巻に掲載した.
|