都市大気境界層は上空約1000mまで発達する大気混合層、その下層10%程度で発達する接地境界層(慣性層)、都市建物高さ以下の層として定義されるキャノピー層から成り、本研究は混合層と慣性層の乱流構造がキャノピー層にどのような影響を及ぼすかを検討するものである。 本年度は屋外都市模型における熱電対と風速計を用いた温度と風速の多点同期計測を実施した。その結果、以下の2点について明らかにした。 (1) 慣性層で発達する乱流組織構造が通過することによって、キャノピー層の空気が巻き上げられ、上空との空気交換が行われることを明らかにした。 (2) キャノピー層の乱流変動には、混合層(~1kmスケール)の影響、慣性層の影響(数10mスケール)、近傍建物の影響(数mスケール)が作用しており、場所(高度や建物との位置関係)によってその各々の影響度合いが異なることを明らかにした。 上記(1)については、都市幾何形状を変化させることで都市の大気環境(例えば温熱環境)を操作できる可能性を示唆しており、また(2)については大気境界層下のキャノピー層の流れ場は非常に複雑ではあるが、全く予想できないものではなく、ある規則に従って動いていることを明らかにし、相似則による記述の可能性を示唆するものである。
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