本年度は昨年度に取得した温度と風の同期観測データに加え、数値解析の結果を用いることで、都市キャノピー内の流れの空間構造について検討を行い、以下のような知見が得られた。(1)観測で示されたようなキャノピー内のスカラー拡散過程のみならず、3次元的な流れ場についても、キャノピー上空で発達する乱流組織構造の影響を強く受けていることを示した。(2)キャノピー内外の熱・運動量輸送は上空の乱流構造の影響を強く受けていることを示した。特にキャノピー内から上空への輸送は建物配列にあまり依存せず、上空で発達する低速ストリークの通過によって主に引き起こされていることが分かった。一方、上空からキャノピー内への乱流輸送は上空の構造の影響に加え、流れ方向に開けた道上で起こりやすくなっており、建物形状の影響を比較的強く受けていることが分かった。 この他に、実都市建物の縦壁近傍で発達する熱境界層の観測を行った。実都市の建物を使うことで、既往の室内実験に比べて非常に大きなレイリー数、レイノルズ数下での実験データを得ることができた。得られた結果より、外層の乱れが熱境界層内部における温度分布の形成に影響を及ぼしていることを明らかにした。また、外層の乱れの影響を考慮した新たな壁関数の提案を行った。
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