研究概要 |
本研究課題では,小流域での土砂流出量の実態把握,および,流域降雨の位置エネルギー(土砂流出ポテンシャル)を起源とし河床へ作用する水流の仕事率(ストリームパワー)のうち土砂流送として消費される効率を調べ,ここから流域毎の土砂流出特性を見出そうとするものである.研究初年度のH21には1~10km^2程度の流域土砂流出量を調べるため,資料と現地踏査から定期観測する砂防堰堤を選定した,候補となる堰堤は揖斐川流域における越美山系砂防事務所管轄の約100基の中から,観測可能な立地条件を有して堆砂が進行しておらず,且つ,降雨の程度によっては大きな堆積が見込める堰堤として5基を選び,写真測量による堆積過程のモニタリングを開始した.一方,過去に堆積した土砂流出量を堰堤の堆砂資料から見積もり,降雨記録から堰堤集水域における雨水流出解析を実施したうえで,簡易な掃流砂量計算による堰堤堆砂域の堆砂過程の再現を実施した.解析対象堰堤は堆砂資料が整っている約80基であり,このうち20基について実測堆砂量に概ね近い再現結果を得ることができた.この流砂量計算には粒度分布の情報が必要であるため,砂防堰堤において計測した代表的な粒度分布を支川毎に与えている.加えて,調査の効率化を図るため画像処理による粒度分布調査法も並行して開発している.この流砂量計算の結果から,各砂防堰堤におけるストリームパワーが土砂流送に消費されるエネルギー効率を得た.この効率と実測による比堆砂量を比較すると良い相関が得られ,土砂の移動しやすさの評価指標として有用であることが示唆された.しかし,流砂量計算と実測堆砂量の結果が大きく異なる堰堤も多く存在することから,代表粒度分布として与えているものと現地粒度分布との相違や,河床変動を考慮し,より現実に即した計算モデルに変更するなどの点が今後の課題として確かめられた.
|