研究概要 |
那賀川上流域や佐用川上流域を対象にして,昨年度構築した分布型流出モデルを適用して,洪水時の森林斜面中の貯水量を推定した.そして斜面崩壊が発生する貯水量,斜面崩壊の発生を免れることのできる雨量等について考察し,"森林斜面が安全に水を貯留できる量"について知見を得た. (1)平成16年台風10号,昭和51年台風17号通過時の斜面崩壊発生に関する知見 那賀川流域を対象とした分布型雨水流出モデルを平成16年台風10号,昭和51年台風17号通過時に観測された豪雨データに適用した.その結果12時間雨量が400mmを超えるような場合に斜面崩壊が発生しやすくなることが推測された. (2)平成16年台風23号通過時の吉野川流域を対象とした貯留高や流出特性の考察 平成16年台風23号通過時の実降雨データを吉野川流域モデルに適用して,全ての斜面について,雨水貯留高と斜面崩壊の危険性について考察し,大雨時に斜面崩壊の危険性が高い森林斜面の流出特性について知見を得た.特異な土地利用形態および利用履歴を有する銅山川富郷ダム流域(別子銅山跡,皆伐-植栽),吉野川早明浦ダム流域(地滑り地-棚田地帯,大規模砂防地帯),および祖谷川流域(地滑り地)について考察した.その結果,植林時期が早い斜面ほど雨水貯水量が大きい(富郷ダム流域)ことや,棚田地帯の貯水量は大きいが,その主要因は地質(地滑り地)にあること(地蔵寺流域)等が分かった. (3)平成21年佐用川洪水における森林流域の貯水能の考察 大洪水となった平成21年佐用洪水についてそのメカニズムを考察した.その結果,佐用川流域の貯水能は極めて小さいこと.その原因は過去の土地利用(森林伐採,焼畑)にあること等が推測された.
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