研究課題
本研究は、密集都市流域の雨水流出プロセスを詳細に把握することが可能である洪水流出モデルを構築することを目的としている。提案するモデルは、洪水流出量を算定する際に最も影響をおよぼす不浸透域の空間情報を、従来のグリッド型には依らず、建物などの一つ一つを表す地物情報を用いて浸透・不浸透域を忠実に再現した地物データGISを構築し、都市流域をモデル化するものである。今年度の研究では、これまで開発してきている地物データGISを用いた洪水流出解析モデルをベースにし、直接流出として雨水が地表面を流下する際に浸透現象を考慮する機能をモデルに加えたTSR (Tokyo Storm Runoff)モデルを開発し、それらの効果が流出現象に与える影響について評価・検討を行った。その結果、TSRモデルは旧洪水流出モデルにおいて地表面の流れに用いられていた街区要素を土地利用地物要素に置き換えることで、より単純な地物データGISの構成が可能となった。また、地表面流の流れに土地利用地物要素を用いる事により、旧モデルでは表現されていなかった地表面流下過程における浸透現象を組み込む事が可能になり、より現実的なシミュレーションが可能であることを明らかにした。しかしながら本研究では、TSRモデルの性能評価を目的に実施したため、実測値による検証ができていないため、モデル精度の向上に関して結論付けることはできなかった。実観測データを用いたTSRモデル性能評価の検討ならびにモデルパラメータの感度分析を行うことによりモデルの検証を進めていくことが今後の課題である。
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水工学論文集
巻: 55 ページ: S517-S522
Proc.Fifth APHW Conf.on Hydrological Regime and Water Resources Management in the Context of Climate Change (IHP-VII Technical Documents in Hydrology No.4)
巻: 5 ページ: 192-198