研究概要 |
現在,社会的な環境の変化から効果的な交通計画の検討が求められており,そのためには高精度な交通行動データが必要であるが,既存の交通調査は調査期間,アンケート調査への負担感,調査費用の問題を抱えている.一方で,鉄道をはじめとした公共交通で普及の進む交通ICカードは,高精度で詳細なデータの取得が可能であり,既存調査では得られない長期間にわたる個人の公共交通利用の追跡が可能であることから,先に挙げた既存の交通調査の問題を解決し得ると考えられる.また,長期の履歴から個人の利用の習慣性などの詳細な把握により,多様なニーズに対応した効果的な交通計画や運行計画への活用可能性の検証が求められている.今年度は,東京都市圏の都市内路線バスにおけるICカードの利用履歴を対象として,ICデータの特性を活かして,従来把握することができなかった長期間にわたる利用履歴から利用者の特性の把握を行った.長期にわたる大量のデータから利用者の習慣性や利用の変動の分析を行い,利用者特性を定量的に把握することに特徴がある.今年度は特に,個人単位のトリップ数の変動に着目した分析,路線や地区の特性を考慮した利用者特性に着目した分析を行った.具体的には、特定のバス事業者の特定の営業所エリアを対象として、一ヶ月間にわたる個人別のバスの利用履歴の分析を通して,個人単位でのトリップ数の変動の要因や,路線や地区別の利用者頻度の差に関して,これまで定性的な把握に留まっていた利用者の特性を定量的に明らかにした。例えば,天候別の利用者特性の違いや,路線別の利用者属性の違いを示すことが可能であることを明らかにした.以上より,バスのICカードの利用履歴データが,運行計画や交通計画の策定に対して有用なデータであることが示された.
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