平成21年度には、街路空間の空間要素とそこを走行する自動車の走行速度の関係についてモデル化に成功した。平成22年度は、実際に都市への適用を行う際に必要となる自動車走行速度に関する面的な速度規制エリアの設定方法について検討するとともに、そのモデルを実地に適用した。 面的な速度規制エリアの設定方法は、現在、多くの国で行われている面的な速度規制の実施を念頭に、ドライバーが無意識に走行する速度と速度規制とが適合していれば、規制の遵守率も高くなるという仮定のもとで誰もがストレスを感じずに遵守する規制エリアの設定方法について検討した。その結果、前年度に作成したモデルを援用することにより、合理的な設定が可能であることが明らかになった。 さらに、実地適用として、島根県出雲市にある出雲大社の参道を対象として、平成22年11月に社会実験を行った。この参道はもともと中央線のある幅員7mの車道と両側にそれぞれ2.5mの路側帯が存在する道路であるが、ここで中央線を抹消し、車道幅員5m、両側に3.5mの路側帯の道路に改修した。その結果、昨年度作成していた走行速度モデルの結果と、走行する自動車の走行速度の実測値がほぼ同じ値となり、本研究で検討してきたモデルの有効性が確認できた。 以上のように、本研究では2年間にわたり、街路空間の要素とそこを走行する自動車の走行速度について検討を進めてきたが、その結果、有効なモデルの作成ができた。また、そのモデルを援用することにより、実際の街路空間において、ドライバーが無意識に安全な速度で走行する空間整備の方法について、ケーススタディを通じてその可能性を示すことができた。さらに、街路空間を整備する際に必要な速度規制のエリア設定の方法についても検討を行い、一定の成果を得られた。
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