本研究は、ロービジョン者のための旅客施設における視環境整備に係る指針を提案することを目的としている。ロービジョン者の移動問題を考える上では、その「見え方」を考慮する必要がある。しかし、ロービジョン者の歩行環境整備全般にわたって、視覚および他の感覚機能からどのような情報を入手して歩行しているのかは十分に把握できていない。本年度は、ロービジョン者の見え方とその情報利用について調査を行った。また、旅客施設の照度、輝度、色差について調査を行った。 本年度得られた成果を以下に示す。 (1) 視機能が低下したロービジョン者においても、約5割程度、視覚から情報を得ていることがわかった。また、視覚機能が低下することにより、その割合は減少し、特に視力、コントラスト感度が低下すると、視覚情報の利用割合が低下し、聴覚・触覚情報の利用割合が増加する。視力では、0.01未満というかなりの低視力者においても、約3割程度視覚から情報を得ており、ロービジョン者にとっては、視覚情報が非常に重要であることがわかった。 (2) 旅客施設(地下鉄駅)3駅の照度、輝度、色差を測定したところ、全般的に階段部分の照度が低く、ロービジョン者等が最も駅構内の階段を危険に感じていることが、このことよりもわかった。また、点字ブロックは黄色が使われているが、路面も色が使われている事が多く、輝度比が一般的に低いことが分かった。また、階段の段鼻等も、段鼻テープが張られているが、こちらも輝度比が低いケースが多くみられた。
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