研究概要 |
干潟底質の有機物含有量は底生生物相に大きな影響を与えることが知られている.底質の有機物含有量を支配する有機物の動態を明らかにすることは干潟の保全や創出を行ううえで必須の課題である.コアマモにより形成される藻場とその近傍の砂地における,POC(懸濁態有機物)輸送フラックスを算出することで,POCの巻き上げや沈降といった底質-直上水間での物理的な輸送過程を明らかにし,さらに,藻場,近傍の砂地それぞれのPOC輸送フラックスを比較して,藻場の物理的作用がPOCの動態に対して与える影響を評価した. 2010年11月に宮城県松島湾内の前浜干潟において,距離的に近い藻場と裸地を選定した.それぞれのエリアにおいて10m四方の正方形の領域を設定し,各辺からPOCの移動量を自記式の流速計,水深計および自動採水器を用いて計測し,領域内のPOC収支を時系列的に算出した.その結果,藻場では,裸地よりも流速が低下していた.また,裸地よりも沈降,巻き上げともに小さいことが明らかとなった.さらに,2潮汐間の平均POC輸送フラックスは,藻場で4mg/m^2/hrの巻き上げ傾向を,裸地では50mg/m^2/hrの沈降が卓越することがわかり,藻場は底生生物に対する有機物の供給源として機能している可能性が示された.
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