研究概要 |
固相抽出による濃縮方法とLC-MS/MS装置の改良を行い、定量下限値として0.5ng/Lを安定的に測定できる手法を確立した。 水環境の汚染実態調査では、河川水からは0.5ng/L未満~8.5ng/L(中央値2.4ng/L,標準偏差2.1,n=17)、地下水からは0.5ng/L未満~1.4ng/L(中央値0.8ng/L,標準偏差0.5,n=12)のNDMAを検出し、浄水原水に含まれうるNDMAのおよその濃度範囲を明らかにすることができた。 微生物を用いた変異原性試験(エームス試験)によるNDMAの定量を試みた。ネズミチフス菌TA100、S9(+)、プレインキュベーション法(37℃,20分)、培養48時間の条件で試験した。結果、陰性対象と比較して2倍以上の復帰変異コロニー数の増加が認められ、変異原性を確認できた最小NDMA用量は62500mg/Lであり、水環境中に存在するng/LオーダーのNDMAはエームス試験では検出できないことが明らかとなった。 NDMAの紫外線分解実験を行った。超純水または脱塩素した水道水にNDMA標準物質を100ng/L濃度で添加した試料に対し、2種の紫外線装置(低圧紫外線ランプ、中圧紫外線ランプ)を用いて照射実験を行い、照射エネルギー量や照射波長がNDMA分解に及ぼす影響を調べた。実験の結果、低圧ランプ、中圧ランプともにNDMA分解効果が認められ、100ng/LのNDMAを、USEPAで10-5の発ガンリスクがあるとされる7ng/L以下にまで分解する為に要する照射エネルギー量は、LP-UVランプでおよそ1700mJ/cm2、MP-UVランプでおよそ2200mJ/cm2であった。NDMAの分解効率は、水道水を用いた場合の方がミリQ水を用いた場合に比べて低かった。また、紫外線照射で100ng/LのNDMAを分解した後に水道法の基準値を満たすように塩素添加を行ってもNDMAの再生成は生じないことを確認した。すなわち、浄水工程で行われる塩素添加を前提とした場合にも、NDMAの分解手段としての紫外線照射は有効であることが示された。 国際紫外線協会世界会議(2009年9月)にて紫外線を用いた水処理に関する研究発表を行い、最新の知見を収集するとともに関連研究者との情報交換を行った。
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