研究概要 |
本研究では,残留塩素濃度を低減した水供給システムの構築に欠かせない「微生物再増殖を促進しない水質の確保」を目的として,原水および浄水中のAOC構成成分を把握するとともに,残留塩素濃度を最小化した水道システムにおける微生物再増殖抑止に要求されるAOC濃度を明らかにする。 平成21年度は,まず淀川表流水を原水とする高度浄水処理施設で採水調査を実施してAOCを測定するとともに,HPLCにより遊離アミノ酸・結合アミノ酸の定量を試みた。その結果,夏季には遊離アミノ酸は概ね検出限界以下となり結合アミノ酸としてのみ残存したが,冬季には浄水中においても遊離アミノ酸・結合アミノ酸ともに数10μgC/Lオーダーで残存することが明らかとなった。また,結合アミノ酸は高度浄水処理により良好に除去されるのに対して,遊離アミノ酸は処理によりむしろ増大することが示された。これらのアミノ酸を水道水に添加して微生物再増殖速度および最大増殖量を調べたところ,上記調査においても存在量が多いことが判明したグルタミン/グルタミン酸,アスパラギン酸について,再増殖速度を顕著に増大させる効果が確認された。 また,水道水中に残存するAOCを低減した試料水の調製方法について,1)生物活性炭への連続通水,2)回分培養による生物処理の2方式により検討を加えた。その結果,運転開始2ヶ月を経過した頃からAOC除去が確認されたものの,検討した生物活性炭の運転条件(接触時間>20分)では安定かつ十分な除去効果を得ることができないことがわかった。この理由として,直接的にはAOCとしては計測されないものの微生物による加水分解作用によりAOCへと変換される前駆物質群の存在が強く示唆されたため,回分培養ではこれらの前駆物質群をあらかじめアルカリ加熱分解処理により低分子化した後に微生物培養を行い,AOC低減に高い効果を発揮することを示した。
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