研究概要 |
本研究では,残留塩素濃度を低減した水供給システムの構築に欠かせない「微生物再増殖を促進しない水質の確保」を目的として,原水および浄水中のAOC構成成分を把握するとともに,残留塩素濃度を最小化した水道システムにおける微生物再増殖抑止に要求されるAOC濃度を明らかにする。 平成22年度は,AOC濃度の異なる給水栓水を用いて,残留塩素濃度を3段階でコントロールした回分培養試験を行い,残留塩素濃度およびAOC濃度が20℃における微生物再増殖に及ぼす影響を調べた。その結果,残留塩素濃度を0.05mg/Lに最小化した場合に微生物学的安定性を維持するためには,約11μgC/L未満にAOCを制御する必要があることを示した。 そこで,浄水処理過程におけるAOC除去能強化を目的として,ナノろ過膜処理(実験プラント)および陰イオン交換樹脂としてMIEX[○!R](オリカ社)を使用した場合のイオン交換処理(ビーカー試験)によるAOC除去特性を調べた。ナノろ過処理によるTOC除去率は90%以上と安定して高い効果を発揮したが,AOC除去率は平均55%程度でかつその除去率は大きく変動した。その結果,夏季には上記目標に近いAOCレベルを達成可能であった一方で,流入水AOC濃度が上昇する冬季には処理水AOC濃度が大幅に増大した。成分別にその除去性を比較したところ,AOC_<P17>成分(糖類,アミノ酸等)の濃度変動が処理水の濃度変動に大きく寄与することがわかった。同様に,陰イオン交換処理によるTOC除去率は50~60%と比較的高かった一方で,AOC除去率は最大34%に留まった。反応pHがAOC除去に与える影響を検討したところ,AOC_<P17>成分(糖類,アミノ酸等)の除去率はpH5で向上した。一方,カルボン酸を中心として構成されているAOC_<NOX>成分の除去はpH6付近で向上したものの,pH5ではむしろ低下することがわかった。
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