化学系廃水など、嫌気性微生物を阻害するような物質を含む廃水に対しては、分解に対しては馴養の可能性が確認されながらも、UASB法の成否である、グラニュールの長期間の成長・保持の点で問題があり、多数の化学系廃水に対して、省エネルギーかつ脱炭素社会の実現可能性を秘めた嫌気性処理を断念する例が多い。本研究では、処理方法の検討が急務で、かつ難分解性な廃水種である水溶性切削廃水に対して、新規の形状の嫌気性リアクターを考案し、嫌気性処理による高効率処理システムの開発を目的とする。水溶性切削排水の浄化方法として、本研究では新規の毎環型嫌気性DHS (Downflow Hanging Sponge)リアクターを設計・製作し、水溶性切削廃水を希釈(約20倍)・塩化第二鉄にて中和した原水を、300日間を越える長期間連続供給した。 連続処理結果では、COD除去率で約70%程度、処理後の残存CODcr濃度は600-800mg/L程度で、滞留時間を5日間以上延長しても除去率の向上は確認できなかった。これより、切削廃水中には嫌気性処理では浄化できない複雑な有機汚染物質が存在していること推察された。この残留する難分解性の有機物の除去について、好気性DHSによる後段処理を行った結果、滞留時間は2日間と長い時間を必要とするが、CODcr濃度で230mg/Lまで減少し、下水道に直接放流することができるレベルの処理水質が確認された。
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