研究概要 |
切削工程で排出される水溶性切削油廃水は水分が90%以上を占め、基油や界面活性剤、防腐剤、消泡剤等の難分解性化学物質が含まれる高濃度有機性廃水である。この切削油廃水は凝集沈殿に代表される物理化学的、熱的処理などによって処理されている現状にあるが、放流に際して充分な処理水質を得ることが難しく、薬品代や電力コストもかかっている。本研究では水溶性切削油廃水に対し、生物学的処理の中でもより安価で高負荷汚濁に対応可能な新規の循環型嫌気性DHS(Downflow Hanging Sponge)処理システムの適用可能性を検討した。 240日におよぶ連続通水実験において、実験開始直後は原水COD_<Cr>濃度5,000mg/Lに対して処理水COD_<Cr>濃度600mg/Lと高い処理水質であったが、その後COD_<Cr>除去率は低下し、概ね除去率40-55%程度で安定した。リアクター内スポンジに付着した汚泥を採取し、Bacteriaに関する16S rRNA遺伝子を標的とした微生物群集構造解析を行った。クローニングによって得られたシーケンスデータより、Holophagaceae科Holophaga属酢酸生成細菌,Porphyromonadaceae科Petrimonas属酢酸生成細菌等が確認できたほか、Sphingomonadaceae科Novosphingobium属土壌油分分解細菌等、切削油の油分分解に関わる細菌群も数クローン確認され、微生物学的観点からも含油廃水への嫌気性処理の適応可能性が示唆された。
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