研究概要 |
本研究の分析対象として、国内の水環境での検出事例、下水処理における原体の除去性等について考慮した上で、医薬品原体として解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン(AAP)、抗てんかん剤のカルバマゼピン(CBM)、消炎鎮痛剤のジクロフェナク(DCF)の3物質を選択した。次に、ヒト体内における代謝経路や代謝産物、各々のヒト尿中排泄率及び標準品の入手性について考慮し、AAPの主要尿中排泄物としてアセトアミノフェングルクロン酸抱合体(AAP-GuL)及びアセトアミノフェン硫酸抱合体(AAP-SuL)、CBMの代謝産物の一種であり薬理活性を有するカルバマゼピン10,11エポキシ体(CBM-EPO)、DCFの主要尿中排泄物としてジクロフェナク4^'水酸化体(4^'OH-DCF)及びジクロフェナク5水酸化体(5OH-DCF)の5物質を選択した。 LC/MS/MS法(LC : Agilent1100series, MS : Micromass Quattro Ultima)による分析条件を検討した上、河川水への添加回収試験により本分析法における各対象物質の定量下限値を算出したところ、その範囲は0.62ng/L(CBM)から11ng/L(AAP-GuL)であり、変動係数も全て10%以下となった。また、添加回収試験の結果、各対象物質のサロゲートの絶対回収率はAAP-d_4が84%、AAP-GuL-d_3が59%、AAP-SuL-d_3が63%、CBM-d_<10>が70%、CBM-EPO-d_2が73%、DCF-d_4が79%、4^'OH-DCF-d_4が78%であった。さらに、対象物質濃度をサロゲートで補正した場合の回収率は全物質において89~105%であり、環境水中対象物質を精度良く定量可能であった。
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