本年度においてはセメントペーストレベルでの3次元空間分布モデルの構築を目的として各種測定を行った。反射電子像測定により水セメント比と材齢の異なるセメントペーストにおいて水酸化カルシウムの自己相関関数が水セメント比によって大きく異なることを明らかにした。また、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を混和したセメントペーストにおいては未反応のフライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を反射電子像測定によって定量化し、普通ポルトランドセメントと同様に自己相関数を求めることができた。さらにマイクロインデンテーション法によってそれぞれのセメントペーストのマトリックス部分である水和物相の弾性係数を測定し、材齢、水セメント比及び混和材の有無によってその値が異なることを明らかにし、弾性係数は水セメント比に大きく依存していることが示唆された。3次元空間モデルの構築においては反射電子像測定から得られた未水和セメント、水酸化カルシウム、未反応フライアッシュ、未反応高炉スラグ及び粗大空隙の自己相関数に基づき各相の空間配置を決定した。自己相関関数は十分離れた距離において距離0における値の2乗に収束したため各相はランダム配置すると仮定した。その結果、各相を配置した3次元空間分布モデルを構築することができ、このモデルにマイクロインデンテーションによって得られた弾性係数を入力しマクロな動弾性係数を推定した結果水セメント比が高い試験体においては実測値とよく一致することを示した。
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