研究概要 |
本年度は,コンクリートの圧縮強度を簡易に推定する非破壊試験方法の一つである反発度法の精度向上を目的として,主にテストハンマーの弾性エネルギーが試験体に及ぼすおもに深さ方向に関する影響範囲について検討を実施した。既往の研究によれば,表層からおよそ5cm程度と言われる,反発度に及ぼす深さ方向の影響範囲について,水セメント比および材齢をパラメータとして,2cm~6cmまでの厚みの異なる供試体を準備し,反発度に及ぼす影響について検討した。予備実験の結果,厚さの薄い供試体では,テストハンマーの衝撃力,また,供試体と供試体背面の物体との衝突によって,供試体が破壊されることが確認されたため,裏側に荷重分散効果を見込むことのできる粘弾性高分子シートを貼付けての検討も実施した。 実験結果より,特に若材齢時において,従来は充分に厚みのあるとされてきた供試体についても,背面に粘弾性高分子シートを貼付けることによって反発度が減少する事例が確認された。これは,テストハンマーによる打撃の厚み方向の影響範囲が,対象測定物表面近傍の強度あるいは硬度によって変化する可能性を示唆するもので,反発度法の精度向上のため反発度への影響要因の定量化のためには,測定対象部の物性とその厚みを同時に考慮した検討が必要であることが明らかとなった。また,当初計画中の,テストハンマー打撃時に生じる表面の変形量とエネルギー吸収量の関連づけについては,測定方法の検討や予備実験に予想以上に時間を要したため,充分な資料を得ることができず,定量化には至っていないものの,本検討については,骨材の影響を含めて,次年度にも引き続き実施する予定であるため,その中で明らかにする。
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