研究概要 |
1995年に発生した兵庫県南部地震は,断層による直下型地震であり,マグニチュード7.3,最大震度は7という非常に規模の大きな地震であった。建築物の倒壊も多く,その被害の多くは1981年の建築基準法改正以前の建造物が占め,中でも在来軸組工法を用いた木造住宅の被害は特に深刻だった。また,2007年能登半島地震,2007年新潟県中越沖地震などの地震でも,木造住宅に大きな被害が発生し,我が国では既存木造住宅の耐震安全性を確保するための耐震補強技術を確立することが重要な課題であると言える。現在,国や地方自治体によって,耐震改修に対する助成制度など,住宅の耐震補強の促進に関する様々な取り組が進められているものの,今もなお補強工法のコスト面や施工性の問題等により戸建て木造住宅の耐震改修には多くの課題が存在する。 本研究の目的は,戸建て木造住宅に対する施工性を重視した新しい耐震補強技術を開発することである。補強材としては,紫外線の照射を受けることで硬化が開始する繊維補強樹脂に着目し,この紫外線硬化型FRPシートを用いて施工性にすぐれた既存木造住宅の耐震補強工法の開発を行った。本年度は,紫外線硬化型FRPによる既存木造住宅の耐震補強工法を開発する目的で,前年度に続き,以下の実験を実施した。 (1)コンクリートに対する二面せん断接着試験 (2)基礎コンクリート補強試験体の3点曲げ試験 当該年度は平成21に実施した実験結果を総括し,軸組補強の耐力評価及び無筋基礎コンクリート補強の耐力評価を行った。研究の最終成果として,筋かい軸組耐力壁の要素耐力(壁強さ倍率)を目標値としていた4.2(kN/m)以上となる補強仕様を実現することができた。また,無筋基礎コンクリートは強度抵抗型補強として有効な工法の仕様を選定することができた。
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