鋼構造建築物の骨組重量は、建築生産コストを評価するためのバロメーターとして様々な場で多用されている。しかしながら、骨組重量では、鉄骨工場製作の労務の難易度を適切に評価できない。そこで、申請者らは、鉄骨製作の労務の難易度を適切に考慮した鉄骨製作コスト評価式の提案をすでに行っている。本研究では、それに基づく鉄骨骨組の最小コスト設計手法の開発を行う。 研究の目的は、以下の3点である。 (1) 国内の鉄骨製作会社の労務の難易度を適切に考慮した鉄骨製作コスト評価式の作成とコスト係数の算出 (2) 材料コストおよび鉄骨製作コストを考慮した鉄骨ラーメン骨組の最小コスト設計手法の開発 (3) 最小コスト設計手法の計算効率と精度検証、最小重量設計解との比較 研究の目的の(1)は、すでに研究済みである。本年度は、(2)を行った。なお、(3)は、次年度行う予定である。 以下に、本年度の研究成果について述べる。 最小コスト設計のための計算手法として、ここでは、厳密解が必ず得られる列挙法と厳密解の得られる保証はないが、列挙法よりも少ない計算量で厳密解やそれに近い解が得られると期待される遺伝アルゴリズムを採用した。列挙法の計算効率改善のためのいくつかの工夫、遺伝的アルゴリズムの精解率、計算効率改善のための工夫を考案し、その有効性をテスト計算により確認した。なお、遺伝アルゴリズムによる最小コスト設計は、11.で示す文献で公表している。 さらに、本研究費で購入したワークステーション(複数CPUによる並列計算機)で並列計算が行えるよう、計算環境の整備と計算テストを行った。具体的には、並列計算を行うためのプログラミング言語openMPを用いて、従来の計算プログラムに追加修正を行った。これにより、計算時間がパソコンによる計算時間の300分の1程度に低減できることを確認できた。
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