研究概要 |
台風などによる構造物の強風被害は、風速だけでなく構造物に関する多種多様な要因によって拡大する。特に強風被害が集中しやすい屋根などの非構造部材の特性は被害拡大要因の一つとして注目されるが、非構造部材は地域の気候に応じた特徴を持つことが多い。そこで,気候特性を考慮することで実際の被害状況によりよく対応した推定をすることができると考えられる。本年度は住家の構造物特性と気温、積雪量に代表される冬季気候条件を整理し、統計学的手法を用いて強風被害拡大に影響を及ぼす因子を類型化し、それらの被害寄与率を調べた。 研究は以下の手順で行った。 1. 2004年台風18号による我が国の自治体別住家被害情報を整理した。 2. 住宅・土地統計調査資料をもとに九州及び北海道の「住宅の構造」と「建築時期」に関する情報を整理し、ある地域における木造住家の割合と1970年代以前に建てられた古い住家の割合を、住家被害拡大に影響を及ぼす因子として抽出した。 3. 都道府県別住家被害に視点を移し、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が行った「一戸建住宅の建築的事項に関する調査資料」をもとに、各都道府県の住家の屋根形状や材料などの資料を整理した。一方で、各都道府県の冬季の気候条件をし、それらの関連を調べたところ、積雪量が多い地域では寄棟屋根の占める割合が低く、屋根形状と積雪量との間には関連があることが分かった。 4. 特に積雪量の多い北海道の住家被害に着目したところ、屋根形状と強い関連を持つ積雪量は住家被害率とも関連を示すことが分かった。 風速および住家の構造特性に加えて,積雪量に代表される気候条件に関する資料を整理分析し,それらの因子間の関連及び被害への寄与率を調べた。ここで整理した被害影響因子とその寄与率を用いれば、風速値のみを利用する現在の手法に比べてより実際の被害状況に対応した推定を行うことができると考えられる。
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