台風などの強風時には風速値だけでなく、構造種別や屋根形状に代表される建物の構造特性や被災地域の気候特性などの多種多様な要因が互いに関連を持って、構造物の被害拡大に影響を及ぼすと考えられる。特に強風被害が集中しやすい屋根や外壁などは、冬季の気温や積雪量といった気候による地域性を持つことが多く、より実際に対応した被害状況を推定するためには地域の気候特性を考慮する必要があると考えられる。本研究は地域の気候特性や構造物特性を数量化して、統計的手法で強風被害影響因子を特定し、その寄与率を定量的に分析する手法を提案することを目的とする。前年度は気候条件の異なる九州と東北・北海道地方の強風被害に着目し、被害影響因子情報を整理した。本年度は前年度に整理した被害影響因子情報をもとに、影響因子の被害拡大への寄与率を算定し、強風被害の推定手法を検討した。研究手順は以下の通りである。 1.前年度に整理した構造物特性に関する因子の中から「屋根形状」と「屋根葺材」が、特に強風被害拡大に影響を及ぼすことを示し、相関分析でその寄与率を求めた。 2.1991年台風19号によって発生した強風被害情報を改めて整理し、「屋根形状」や「屋根葺材」だけでなく「屋根の棟と風町との角度」もまた強風被害拡大に影響を及ぼすことを示した。 3.強風被害拡大影響因子として、その寄与が明らかとなっている最大風速、最大瞬間風速、風速の標準偏差に加えて、住家の屋根形状と屋根葺材、棟との風向角といった構造特性を数量化し、重回帰分析手法を用いて住家被害の状況を推定した。 検討の結果、気候との関連が深い屋根形状などの個々の住家特性を考慮することで、住家被害推定精度が向上することを確認した。
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