研究概要 |
建物の複層間に跨がって接続される制振ダンパーによる地震応答低減効果について,比較的少ないダンパー量と小さい断面の支持部材を用いてより合理的な地震応答低減手法について検討を行った。実験に使用した振動モデルは,プレート500×300mmのプレート5層構造となっており,各層の高さは300mmで,全体高さは1,518mmである。試験体はスラブプレート,曲げ柱,回転拘束バネで構成され,曲げ柱及び回転拘束バネにはリン青銅板を用い,それぞれ断面寸法(幅×厚さ)は120×5mmと30×3mmである。各層質量は1~4層が23kg,最上層が17kgとなっている。固有振動数は1次~3次モードが各々1.8Hz,7.3Hz,14.5Hzとなっている。使用したMRダンパーはダッシュポットとフリクションスライダの並列であるビンガムモデルで置換でき,ダッシュポットは2.5~4.0Ns/cm,摩擦力は0~100Nの可変性能を有する。実験の結果,概ね意図とおりの制御を行うことができた。本実験では,振動モデルの曲げ変形が制御に及ぼす影響はほとんど見られなかった。ただし,複層間にダンパーと取付けた場合,地震波によっては高次モードとみられる短周期応答が検出されたが,位相遅れを考慮したデジタルフィルタ操作により,制御に及ぼす影響は除去でき,ダンパーへの変位を単層間設置に場合に比べて大きくすることができ,地震応答低減効果を単層間設置よりも低減できることがわかった。また制御則にかかる比例定数の各層への配分については,変形角よりせん断力に比例させた配分の方が高い制御効果が得られることがわかった。
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