本研究では、経済性や加工性が高い木質構造の長所を生かしつつ、部材の大きさの制約や接合部の強度確保の問題を補う目的から鋼板と木材とを組合せた鋼木複合断面部材を開発する。複合断面は、鋼板を木材で挟み込む形状をしており、その一体化接合には、鋼構造用の高力ボルトを利用する。このような鋼木複合断面部材の45分準耐火構造性能を東京理科大学の耐火実験施設を利用して調査した。複合断面は、木質構造建物における準耐火「燃え代設計」の考え方を応用し、木材を鋼材の耐火被覆として利用する。常温時は複合断面として長期および地震などの短期荷重を支持し、火災による高温時は鋼材のみで長期荷重を支持する。予備的な実験を2回行い、断面形状を改良した。一連の実験での調査項目は、木材の厚み、一体化接合部のボルト露出の是非、鋼材の小口(長方形断面の短辺)露出の是非であった。実験によって、得られた知見は以下の通りである。(1)ボルトを露出させると、露出部周辺の鋼材温度は上昇するが、それで耐火性能を損なうほど致命的ではない。(2)鋼材の小口面は木材面よりも奥まった位置としていたが、それを露出させた場合の鋼材の温度上昇は、露出幅に依存した。露出幅が狭い(9mm)場合は広い(19mm)場合よりも鋼材の温度上昇が抑制されたことから、小口露出面の木材の隙間における対流に差が生じたと考えられる。(3)鋼木複合断面部材により45分準耐火構造性能を確保することは十分に可能である。
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