本研究では、経済性や加工性の高い木質構造の長所を生かしつつ、部材の大きさの制約や接合部の強度確保の問題を補う目的から鋼板と木材とを組合せた鋼木複合断面部材を開発している。複合断面は、鋼板を木材で挟み込む形状をしており、その一体化接合には、鋼構造用の高力ボルトを利用する。2010年度まではトルシア形高力ボルトを用いて木材のめり込み基準強度の10倍を超える圧力を加えて締め付ける接合方法について研究したが、木材の経年による接合部性能の変化が予想された。2011年度は、木材の繊維方向への支圧機構を主体とした新たな接合方法を考案した。鋼板と木材を圧着し、部材の材軸方向へのずれを抑止する機能を接合金物の形状を工夫することで実現しようと試みた。これに対して、2012年度はより簡単なシステムによる接合方法を開発した。削孔した木材に鋼管を挿入し、高力ボルトで締め付けることで、鋼管は直径方向に拡大する形で塑性座屈し、木材との一体化の上でのガタを解消する。これにより木材と鋼材との部材材軸方向のせん断(ずれ)剛性を確保し、複合断面部材としての性能を確保する。一体化接合部のせん断(ずれ)性能を実験的に評価した。また、同接合方法を用いた大スパン架構の試設計を行い、実用の可能性を検討した。
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