研究概要 |
平成21年度は,以下の3項目について検討を行った。 1. 雪荷重が壁の耐力低減係数に及ぼす影響 本研究では,静的増分解析により雪荷重が壁の耐力低減係数に及ぼす影響を検討した。解析で設定した耐力壁は壁量充足率1.0,すなわち,現行法規をぎりぎり満たす条件とし,雪荷重増加に伴う地震荷重増加を考慮して雪荷重に応じて壁倍率を増加させた。金物はHD,CP-T,およびかすがいとし,平面規模10畳程度の箇所を対象に解析を行った。その結果,壁の耐力低減係数は,雪荷重の増加に伴い大きくなり,雪荷重によって壁倍率が増加した影響が強いことが明らかとなった。 2. 屋根雪の動的挙動が木造住宅の地震応答に及ぼす影響 本研究では,無落雪屋根や勾配屋根で発生する地震による屋根雪の動的挙動が木造住宅の地震応答に及ぼす影響を解析的に検討した。先ず,質点系の地震応答解析で無落雪屋根および勾配屋根の地震応答を検討した。その結果,無落雪屋根では,屋根雪が規則的に滑雪した場合は構造体の揺れが小さくなることが明らかとなった。次に,個別要素法を用い,勾配屋根で発生する屋根雪の動的挙動と構造体の応答性状との関係を検討した。その結果,振動実験を再現できる可能性を示すことができた。 3. 積雪期地震での被害関数および耐震補強効果の明確化 本研究では,積雪期地震での被害関数および耐震補強効果の明確化を図ることを目的に,札幌市内の既存住宅を対象に,耐震診断を実施した。平成21年度は,6棟の診断結果が得られ,2000年以前に建築された住宅の耐震性は確保されていないことが明らかとなった。また,屋根構面の耐震性をみると,無落雪屋根に関しては,現行の基準で耐震診断できないことが明らかとなった。
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