研究概要 |
平成23年度は,雪荷重と木造住宅における壁の耐力低減係数との関係を静的増分解析によって検討するとともに,夏期と冬期で異なる壁の耐力低減係数を考慮した耐震診断を行った。壁の耐力低減係数とは,地震時に生じる柱の引き抜けによって耐力壁の性能が低下することを考慮した係数である。雪荷重が作用する冬期においては柱が押さえつけられることから,壁の耐力低減係数は夏期に比べて増加するものと考えられる。本研究では,雪荷重を変化さ覚た静的増分解析を行い,雪荷重と壁の耐力低減係数との関係を導いた。その結果,設計用積雪深が1.5m程度の場合における冬期の低減係数は,夏期でCP-T等による補強を行った場合に相当することがわかった。また,夏期と冬期のそれぞれで耐震診断を行った結果,冬期の評点は夏期に比べて小さくなる傾向を示すものの,雪荷重による柱の押さえつけ効果によって,評点の低下割合がそれほど大きくないことが明らかとなった。 次に,強い揺れによって生じる屋根雪の滑動・滑落を考慮した地震応答解析を行い,屋根雪の動的挙動が発生した際における木造住宅の地震被害状況を検討した。屋根雪の動的挙動は,屋根葺材の摩擦係数を考慮できるように改良した。無落雪屋根で発生する屋根雪の滑動,勾配屋根で発生する屋根雪の滑落を解析で再現し,構造体の最大応答変位を用いて地震被害関数を算定した。その結果,屋根雪の動的挙動が発生しない場合は,雪荷重の増加に伴い被害が急激に拡大した。これに対し,屋根雪の動的挙動が発生した場合は,屋根雪が無い場合の被害状況に近似する傾向を示した。このように,屋根雪の動的挙動は木造住宅の被害を緩和する効果を有していることが明らかとなった。
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