研究概要 |
鉄筋コンクリート構造物の耐久性は、局所的な水分挙動が大きく作用していることは理解されているが,既往の測定手法では対照とする系に影響を与えることなく,高空間分解能・高時間分解能での測定は不可能であった.一方で,コンクリート中の水分挙動は,多くの研究者により緻密な理論研究がなされているものの,それに見合った高空間・時間解像能での検証が困難であった。 そこで、本研究は建築材料分野での適用例が少ない中性子ラジオグラフィを適用し、コンクリートのひび割れを介した劣化因子の浸透に起因する局所的劣化リスクの評価手法の構築することを目的とした一連の実験を行っており、当該年度は(1)環境条件に応じた水分移動に関わる基礎物性の把握に関する実験、(2)鉄筋近傍の水分移動特性の評価に関する実験を実施した。 具体的には、(1) コンクリート中の水分移動に関わる基礎物性の温度依存性を明らかにすることを目的として、中性子ラジオグラフィ撮影室に温度コントロールチャンバを導入(ペルチェ素子温調ユニット)し、異なる温度環境下における吸水試験(ASTM C 1585-04準拠)を行った。温度水準は5囗~60囗、初期含水率水準として水分飽和度を3水準程度して実験を行った。得られた結果から、開発済みの画像解析手法により、コンクリート中の水分移動モデルとして知られる水分拡散係数を得た。 (2) 鉄筋コンクリート中の鉄筋周囲に生じている付着損失領域での水分移動特性を把握することを目的として、両引き試験により人工的に鉄筋とコンクリート間の付着損失領域を設けた鉄筋コンクリート試験体及び損傷を加えていない試験体の鉄筋近傍における水分挙動について中性子ラジオグラフィにより測定を行った。その結果、鉄筋近傍におけるコンクリート中の水分挙動を可視化で捉えることに成功し、さらに得られた結果より、水分移動特性の評価を行い局所的な水分環境の知見を得た。
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