研究概要 |
本研究では,合成梁用シアコネクタの接合に用いる撃込み鋲接合と,頭付きスタッド溶接の2つの接合要素が構造用鋼材の引張性に与える影響を比較することを目的としている.この2つの接合要素を施した鋼材の引張試験結果,降伏応力度と最大応力度における撃込み鋲接合と頭付きスタッド溶接の違いはほとんど無いが,塑性変形能力は撃込み鋲接合が頭付きスタッド溶接に比較して乏しいことが明らかになった.また,破断状況の分析結果,頭付きスタッド溶接は溶接部位を避けて破断線が形成されたが,撃込み鋲接合の破断線は撃込み鋲を通ることが判った.したがって,撃込み鋲接合は鋼材の破壊モードに関与することを念頭において使用しなければならない. 撃込み鋲接合の接合性能に関する信頼性向上を目的としで,撃込み鋲接合界面のビッカース硬さ試験および光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った.ビッカース硬さ試験結果,撃込み鋲の主な固着原理は母材の残留応力による締付けであることが確認できた.光学顕微鏡観察結果,亜鉛メッキとローレット加工の施されている撃込み鋲側面で界面のはく離が発生していることと,鋼材は強加工を受けていることが明らかになった.また,はく離部とローレット加工による溝に亜鉛が溜まっていることから,鋼材と撃込み鋲は高速で衝突・変形し,撃込み鋲底部では爆発圧接が生じ,亜鉛はほとんど上部に吐き出きれたと考えられる.SEM観察結果,撃込み鋲底面の鋼材との界面に亜鉛は検出されず,完全にクーラッド化していることが明らかになった.そのため,撃込み鋲のせん断試験および撃込み鋲接合デッキプレートのせん断試験において,撃込み鋲が破断する場合でも撃込み鋲底面の界面の圧接状態は良好であり,強固な接合となっていると考えられる.
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