研究概要 |
本年度では,屋内外における光環境・熱環境の予測・評価のために必須となる放射計算アルゴリズムの開発を行った。具体的には,光環境,熱環境を同時に評価できるように,同一の気象データを読み込み,照度分布,輝度画像や受熱日射量分布の算出が可能となるアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムには,天空輝度分布の数値モデルが組み込まれており,特に影響が大きく出る壁面・窓面などの鉛直面が受ける天空光,天空日射の方位による違いを考慮することが可能となっている。放射エネルギーと照度分布を指標に,多重反射の回数やマルチレイトレーシング法を用いる際に射出する探査線の本数を計算精度と計算時間の観点から検討した。 次に,設計者が用いるパッシブデザインの支援ツールとして重要な部分である,汎用3D-CADから室内の計算質点を取得するアルゴリズムの開発を行った。その結果,屋外と同様のザイズの質点の取得を行うと,室内の形状の再現精度が低下し,一方,室内に合わせた質点の取得を行うと,計算負荷が増加してしまう問題点があり,今後,屋内,屋外を分けて質点化するアルゴリズムの開発が必要であることがわかった。また,来年度行う熱伝導計算のアルゴリズム開発において,屋内と屋外の異なる質点を連成した伝熱計算の提案が課題となる。 最後に,パッシブデザインの中で重要な手法の一つである樹木の日射遮蔽効果をモデル化するために,樹冠の日射透過率が木漏れ日の比率で表現できることを,実測を通して検討した上で,CGで再現した数種類の樹種の樹木モデルをもとに,樹冠の形態に関するパラメータとGPUを用いた詳細なレイトレーシング法で算出した木漏れ日の比率との関係の検討を行った。その結果,従来の樹木の日射透過モデルで用いられてきた葉面積密度や透過距離だけでは,樹種の違いなどが十分に再現できなことが示唆された。来年度では,この結果をもとに,樹木モデルの開発を行う予定である。
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