住宅の高気密化に伴い、空気質保全のために住宅内部の適切な換気経路および換気量の確保が必要となっている。任意の条件において定量的にこれらの検討を行えるようにするためには、各室間の隙間量(流量係数)を知ることが必要となる。そこで、1種類のトレーサーガスを用いて多室間の隙間量を推定する方法を検討した。室数が2つの場合についての推定方法は既に明らかにしていたが、3室以上の場合については明らかでなかった。そこで、室数に依存しない一般的な隙間量推定法を明らかにすることを目的として検討を行い、以下の推定方法を明らかにした。 トレーサーガスの発生と発熱を任意の室で行い、濃度・温度の定常状態を得る。この定常状態に対応する各室の質量収支式と濃度収支式をつくる。このとき、各室間の隙間量と各室の床面圧力が未知数となる。これらの未知数を得るために、各室の質量収支式と濃度収支式を連立させて解く。1つの濃度・温度の定常状態だけでは、式の数と未知数の数が一致しないため、複数の濃度・温度の定常状態に対する式を得る。質量収支式と濃度収支式の数が未知数より多くなれば未知数の数と等しい数の式を用いるが、その式の組み合わせ方法は複数ある。隙間量と床面圧力の関係は非線形であるため、これは非線形連立方程式となる。非線形連立方程式の数値解法であるニュートン法を用いてこれを解くことにより、隙間量を推定する。連立方程式の組み合わせの中には線形依存などのために解けないものもあるため、全ての式の組み合わせについて解き、解が得られたものの平均を推定値とする。 この推定方法について、4室8開口の建物モデルを対象として数値実験を行った結果、3%以内の誤差で流量係数を推定することができた。 また、換気量に影響を及ぼさずに濃度・温度分布を均一にするためのトレーサーガスの攪拌方法について、模型実験を行って検討した。
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