本年度は、前年度に引き続き、室温分布実験BOXを用いて、サーキュレーターによる上下温度差分布の改善効果と省エネルギー性に関する実験を行った。本年度の実験では、特に省エネルギー性に着目した。通常使用時の居住域室温が、サーキュレーター使用時の居住域温度と同等となる場合のエアコンのエネルギー消費量比較を行った。その結果、例えば気密グレードが4の場合、通常使用時の室温をサーキュレーター利用時の室温と同等とするためには、リモコンの設定温度を4℃上げなくてはならないが、サーキュレーターファンの消費電力を加味すると、省エネルギー効果はほとんど得られないことが分かった。一方で、室温分布の時系列的変化を分析すると、特に立ち上がり時はサーキュレーターを用いることで、同等のエネルギー消費の下、良好な温熱環境を実現できることが分かった。サーキュレーターの有効利用は、前年度に検討した設置位置の適切な選定と共に、エアコンの挙動に対応した運転時間の選択が重要であることが明らかになった。また、サーキュレーター使用時のエアコンのCOPは若干悪化した。これは、空気循環により吸い込み温度が下がってCOPが向上する効果と、負荷率が上がってCOPが低下する効果が相殺した結果であることが冷凍サイクルを基にした分析から明らかになった。これらの結果は、2012年空気調和衛生工学会大会の発表論文としてまとめ、2012年5月18日に投稿した。 また、本年度は研究の最終年度として研究の成果の取りまとめを行い、初年度の成果である除霜運転の発生条件、ならびに除霜を含む運転時のエネルギー消費モデルを再検証した。研究代表者が提案しているエアコンのエネルギー消費量モデルにおける、デフロストによるCOP補正係数として再検討した。既存モデルの改良を含め、成果を日本建築学会環境系論文集の投稿論文としてまとめ、2012年5月10目に投稿した。
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