オフィス等では1防煙区画の大規模平面空間が存在する。従来は防煙垂れ壁で防煙区画を形成し、排煙設備との組み合わせで煙制御してきたが、昨今、性能設計では平面的な拡がりで蓄煙容積を稼ぎ、空間全体で排煙する思想である。しかし、大平面空間での煙流動現象そのものが明らかでない等の問題が指摘されている。 本年度は、天井面下の水平方向の煙伝播過程に関する計算モデルを構築し、煙の流動過程を調べることを試みた。実験との比較検討によるモデルの妥当性の確認や改良が必要だが、第一ステップとして計算から得られた結果を考察した。 計算モデルは、プルームが天井に衝突した後の天井面下の水平煙伝播過程について、厚さ方向に均質な計算ボリュームを仮定し、質量流量とその温度から煙層厚さを決定するモデルとした。また、流体の特性値が異なるものの、まず流れの大まかな傾向を調べることに着眼し、水理学で提案されている零流速面での上層流れの密度フルード数に基づく連行モデルを組み込み、下部空気層からの空気連行を考慮した。 煙伝播過程のケーススタディとして火源からの距離に対する上部煙の温度と厚さを調べたところ、下部空気の連行を考慮することで煙がより近い位置で降下する傾向が見て取れた。一方、連行による温度減衰への影響はそれほど大きくない結果となった。 一方、長距離の煙流動現象の観察や構築モデルの検証ための実験模型を設計、製作した。実建物では建築基準法による重複距離制限等の理由から、大平面建物に多く見られるセンターコア型の室空間の奥行きは20m程度に抑えられるため、実験模型では実規模の1/10スケールとして幅2m、高さ30cmを採用し、長手方向は最大20mまで2mピッチで可変とした。実験火源は発熱量の調整容易さからブンゼンバーナー型のガスバーナーを採用した。次年度、実験を行い、計算モデルの改良を図る。
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