研究概要 |
本研究では,大規模平面空間における火災時の煙の流動性状を対象として,移動に伴う空間上部に形成される煙層の挙動と,天井面下の煙伝播が火源から周囲に広がって周壁に到達した後の煙伝播性状や行き止まり部分に到達した後の煙挙動(壁面衝突による下方への流れと浮力によって煙層のすぐ下に煙層と逆行する流れによって煙層の厚さが見かけ上増大する現象)を捉え,モデル化しようとするものである。比較的小規模な空間であれば,煙層を形成する天井面下の煙流動は温度減衰が比較的大きくなく,空気に対して浮力を保って壁面に衝突するため,衝突時に多少の乱れは生じるものの安定的に煙層を形成する挙動が見て取れる。一方,空間が平面的に大きくなると,天井面下を流動する煙が熱伝達や下部空気層からの空気の巻き込みによって空気に対する浮力が小さくなるため,壁面に衝突した後の挙動としては空間下部に停滞し,室内空間内の空気の移動に伴って徐々に移動するような挙動を示す。 こうした一連の煙流動性状に対して,昨年度構築した煙の水平伝播モデルを改良することを試みた。具体的には壁面到達後の折り返しの流れに伴う煙層形成部分を考慮した。しかし,浮力と慣性力のバランスに基づいて煙層の成層化条件をモデルに組み込むこと,さらに空気の巻き込み性状についてフルード相似則に基づく縮尺模型ではレイノルズ数が小さく巻き込み量を過小評価していることが考えられるため,実規模に近い条件での同挙動を分析する必要がある。
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