平成22年度は、欧州における自治体レベルの地域間協力について、文献調査を継続するとともに現地調査を実施し事例分析を行った。事例として、EUが主導するプロジェクト型の都市ネットワーク、及びアルプス地域を中心に環境負荷低減と観光の両立を目指す自発的都市ネットワークの2つのタイプの地域間協力について実態を調査した。 まず、EUが主導するプロジェクト型の都市ネットワークでは、地域間の格差是正を目的とし、地域間協力の戦略的な枠組みをボトムアップで構築し実践していることがわかった。こうした事業プロセスは、ネットワークに参画する都市におけるステークホルダーの新しい対話の契機を生み出し、またガバナンス形成のトレーニングの機会としても機能していることがわかった。しかし事業展開は硬直的でシステマティックであるため、各都市の状況に応じた冗長性がないという点で課題が残されていることがわかった。他方、環境負荷低減と観光の両立を目指す自発的都市ネットワークは、参加都市が目的を共有しゆるやかなつながりを形成している。効果的なマーケティングを行うなどマネジメントに注力することで、観光地として包括的かつ広域的な地域ブランディングを可能にしていることがわかった。しかし環境負荷低減へのインパクトは精査されていないなど、ネットワーク化することによって得られる効果については引き続き分析が必要である。 以上の事例研究より、欧州において多様な目的のもとに広がる大小様々な地域間協力の輪が、地域の課題の克服を支援しまた涵養する役割を担いつつあることを示唆した。
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