1930年代のニューディール政策期、米国連邦政府は、E.ハワードの田園都市論を規範とする住宅地区の開発計画を、生活環境の悪化に悩む既成都市部の外縁に構想した。グリーンベルトタウン計画(Greenbelt Town Program)と名付けられたこの構想は、メリーランド州「グリーンベルト」(Greenbelt/1600戸)、オハイオ州「グリーンヒルズ」(Greenhills/676戸)、ウィスコンシン州「グリーンデイル」(Greendale/572戸)の3地区に実現する。これらのテラスハウス群は、いずれも公的賃貸住宅として建設されたが、第二次世界大戦後には、全て居住者に対して払い下げられている。 本研究は、これら3地区のグリーンベルトタウンが、払い下げから今日までの時間のなかで、それぞれ地区の運営組織・制度をどのようなかたちで築き上げ、それによりどのような居住環境をかたちづくってきたか、を明らかにすることを目的としている。 最終年度は、3地区のグリーンベルトタウンの現地調査で得られた資料をもとに、(1)地区の運営組織・制度の経年的把握、(2)地区の空間変容の類型化、(3)地区がこれまでに直面した居住環境マネジメントの課題とそれに対する対応の経年的把握を行い、研究をとりまとめた。特に3地区のなかでも充実した資料の残るグルーンベルトでは、払い下げ以降60年間に設けられた住民組織とその活動内容を網羅的に整理した。
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