本年度は本研究で対象とする都市計画法第6条の都市計画基礎調査をはじめとした行政内での調査と、参加型まちづくりの成果の一部ともいえる参加型まちづくりを通じて収集された情報について、前者の調査状況を各都道府県へのアンケート調査やインタビュー調査を元に把握するとともに、後者についての質および量の現状についての把握と実験の事前準備をおこなった。 前者については約4分の3の都道府県が基礎調査に関する調査マニュアルを策定し、都道府県と市町村の共同で調査を実施している。調査項目・方法・まとめ方は昭和62年に旧建設省により策定された都市計画基礎調査実施要領をベースとしつつ、予算的制約.も勘案して都道府県の実情に応じて調査項目を取捨選択している様子がわかった。その際には都道府県下を一律の項目で被うのではなく、適宜、都市化の進展状況に応じての設定となっている点も興味深い。一方、特に都市化が進んでいる地域では、都道府県が設定したマニュアルによらず市独自により詳細な調査を行っているものも見られた(大阪市や神戸市)。このような状況下では、全国の様子を特定視点から比較考察することが難しいとも考えられるが、土地利用や建物用途といった基礎的な項目についてはほぼ最低限の調査項目・範囲を対象としていることから、対応が不可能ではないといえる。しかしながら実務的には調査結果のまとめ方や調査方法の差異に対応する労力も少なくなく、必要に応じて都市化の様相に適した調査項目、頻度、範囲などを国や研究機関が提示していく必要も指摘できる。 後者については、参加手法とそれによって集められる都市の情報、さらには参加者への情報の「返し方」との関連性を吟味し、東京都大田区大森地区において実験を開始した。本実験は23年度も引き続き行う予定である。
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