当該年度は、一つのシステム上で複数の避難行動モデルを取り扱える避難行動フレームワークを開発し、避難シミュレーション結果の妥当性を検証するため、群集歩行特性の比較分析、建築物の避難シミュレーションの検証を行った。フレームワークとは、その開発において汎用性の高い再利用可能な機能をまとめたモジュール群であり、避難行動モデルとして、Social Forceモデル及びRVOモデルを対象に開発を行った。Social Forceモデルとは、社会心理学的な要素と物理的な力を結びつけた力学モデルであり、RVOモデルとは、移動物同士の衝突回避を行うルールベースモデルであり、異なる種類のモデルを同じパラメータで比較し、以下の結果が得られた。Social ForceモデルのほうがRVOモデルよりも建物出口における群集のアーチアクションが再現されることや、群集流動係数にばらつきが少ない点で避難シミュレーションとして適していると考えられる。また、具体的な建物での避難シミュレーションの適用例では、各モデルの群集の大きさ、形、動きの違いで居室の避難時間に影響を及ぼす結果が得られた。このように避難行動フレームワークは、異なる避難行動モデルのシミュレーション結果を比較検証するシステムとして有用であり、より信頼性の高い避難安全検証法の確立に意義のあるものである。さらに地図データベースを用いた広域避難への拡張を行い、メッシュとネットワークを組み合わせ、空間を階層的なモデルとすることで計算負荷を軽減させることで、その汎用性を示した。
|