研究概要 |
当該年度は,昨年度から継続して人間の避難行動を各要素に分解してモデル化する仕組み(避難行動フレームワーク)を,大規模な建築・都市空間に適用し,数万人規模の避難行動を取り扱えるようにシステムへの拡張を行った.具体的には,GPUを利用した並列コンピューティング技法を用いることで,避難行動モデルの一つであるSocial Forceモデルを並列計算している.その結果,従来の逐次処理型のアルゴリズムよりもスケーラビリティが向上しており,広域な地下空間において2万5000人の避難行動をシミュレーションする際,一般的なPCで約7倍計算時間が短縮され,実時間でのシミュレーションが可能となった.また,建築物自体の避難安全性能を向上させる手法として,遺伝的アルゴリズムを用いた避難経路形状の最適化プログラムの開発を行った.具体的には,近年の複合商業施設に多くみられるシネマコンプレックスの典型的な平面図を対象として,建築物の避難安全性能に影響を及ぼすと予測される避難経路形状(扉位置・通路幅等)を,(1)避難距離短縮と(2)群集の分散を指標とした評価関数によって最適化を行った.さらに,生成された平面プランに対して,避難行動フレームワークを用いた避難安全性の評価を行った結果,遺伝的アルゴリズムの世代を重ねるごとに避難時間が短縮したことから,本システムの最適化が有効に働いていることが確認されるととともに,二つの評価指標についても,適切な重み係数を設定する根拠が得られた.
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