本年度は、システムの中核となる世帯数予測モデル開発を中心に行った。まずは、徳島都市圏を対象にアンケート調査を行い、世帯移動の特徴を把握した。その結果、世帯主年齢40歳以下の世帯は現状の徳島都市圏の住環境に満足している割合が高いこと、世帯の移動先選択に日常買い物施設までの距離が重視されていること等が分かった。この成果を踏まえ、セルオートマトン型の市街化予測モデルを開発した。このモデルでは、空間を120mメッシュに区分し、セルごとに利便性、区域区分、周囲の市街化率を計算し、そこから得られる市街化ポテンシャルと乱数を用いて市街地遷移を判定する。 このモデルを用いて、(1)現状維持、(2)線引き廃止、(3)森林開発禁止、(4)区域区分ごとに開発面積を制限、(5)市部の市街化区域を残し町部全域を市街化調整区域に変更、の5つの政策シナリオを想定し2006年から10年後の市街化を予測した。この結果を用いて、対象地域を17に区分した地区別の世帯数を予測した。その方法は、まず2006年の各地区における1セルあたりの世帯数を計算し、この値に各シナリオの予測結果から得られる将来の市街地セル数を掛け合わせ、地区別の世帯数を予測した。その結果、シナリオ(2)の結果はシナリオ(1)と比べて八万・勝占地区で1569世帯、川内・応神地区で3132世帯、北島町で1786世帯増加した。これらの地区は、調整区域の規制が解除されたことで利便性要因が大きく影響し、市街化が進んだと考えられる。その一方、藍住町ではシナリオ(1)の結果よりも9843世帯減少した。線引きを廃止することにより、藍住町で発生していた開発需要が周辺に分散する傾向が示された。 次年度は、地区別の住宅供給の違いが将来の世帯数変化に現れるようなモデルに拡張し、GISと統合することで、計画支援システムを開発する予定である。
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