本年度は、フランスの都市計画関連制度の現況に関し、以下の研究を行った: (1)開発型都市デザインの事例総括:我国でも2004年に景観法が制定され、景観街づくりの議論が活発になっている。しかし、それらの殆どが歴史的環境や自然環境、或いは低層住宅地の保全を指向しており、開発はどちらかと言うと性悪なものとして捉えられている。対して、フランスでは適切な尺度とプログラムによる開発型都市デザインの実績が蓄積され、歴史的環境に敬意を払いつつも現代性を前面に押し出す街づくりが進んでいる。それらに関し、パリ、デファンス、リヨン、マルセイユ、レンヌ、ストラスブールなどの最新の取り組みの他、土木デザインの試行などまとめ彰国社より『フランスの開発型都市デザイン-地方がしかけるグラン・プロジェ』として公刊した。 (2)広域都市計画の実態把握:我国ではフランスの広域行政組織や広域都市計画制度に関する報告は多いが、前者に関しては職業税の共同管理による水平調整システムが広域連携の誘因となっている点、後者に関しては政治的対立から広域都市計画の範囲が実体的都市域よりも過小となりがちな点を明らかにした。また、広域都市計画立案機関と弱小基礎自治体の都市計画策定支援組織が整備されているからこそ、それらの策定が円滑に行われている点を明らかにした。 (3)首都圏整備計画の概要把握:我国では都市計画の地方分権が絶対善として捉えられる傾向があるが、首都圏整備に関しては国の関与が不可欠である。フランスでは地方分権により断片化した都市計画を反省し、国際的な都市圏競争で優位に立つため国が『グラン・パリ』計画を推進している。その概要を把握するため、ジェラール・マルクー・パリ第1大学教授にヒアリングを行うなどした。
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