住空間においては、近年のライフスタイルの変化に対応した良好な住環境を提供すべく、住宅の外的環境との接し方、特に窓や開口・スリット等を用いた自然光の採光方法に関し、特異な形状・仕様、形態の実験的な住宅設計事例が多く見られるようになったが、これらの特異な採光方法と住空間の性能を客観的に評価しうる基準整備が急務である。本研究では、住空間の「休息効果」に関わる性能を、空間の疲労回復性能と呼び、各種の生理計測手法を駆使することによってその定量化を行うことを目的とし、自立接合式のユニットパネルにより四方壁面と天井面を有する単純形状の実験閉空間を構築し、開口部形状・箇所数・形態等を逐次変化させながら、実験空間内部の被験者にパフォーマンステストを行い、A~Cに示す3種類の生理状態の計測を実施し、この要領で執務-休憩-執務の状態変化にみられる疲労蓄積・回復度合いの推移を計測・抽出した。 A)「精神的疲労」の計測…フリッカー値 B)「ストレス値」の計測…唾液中アミラーゼの分泌量 C)「作業集中度」の計測…瞬目値(瞬目頻度) この結果、疲労回復性能を増大させる居室広さと開口部形状に特異な連関が見られたため、そのうち効果が顕著な2事例において次年度研究計画において追試験を行い、実効的な評価を行うとした。
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