研究概要 |
回復期リハビリテーション病院は、1999年に制度化され,この9年間で48,012床に増加したが,その建築計画研究に関する研究は多くない。これは従来の回復期リハ病棟にはリハビリ室程度の建築的特徴しかないため,主な課題は運営上の問題(ケアやリハビリ)として捉えられ,建築計画には焦点を当てにくかったことが挙げられる。こうした中で2007年10月,従来の病院とは全く異なるコンセプトとして,"生活環境の導入によるリハビリ促進"を掲げたリハビリテーション病院(S病院)が竣工した。本研究はこの新しい回復期リハビリテーション病院(大阪府・箕面市)が患者の滞在時間・行為に及ぼす効果を,同一法人が運営する4人部屋を中心とした従来型の回復期リハビリテーション病院(香川県・三豊市)と行動観察調査(全36名,のべ432時間)およびアンケート調査の方法により比較・検証した.その結果,両病棟の患者の行為の割合は1日の時間の概ね2割の時間がリハビリテーションに当てられ、会話等の社会行為については、ほぼ同じであり,生活基本行為と余暇行為の合計はおおむね65%であり、同一法人に属する両病院では同じような時間配分で入院生活やリハビリが行われていたが,その一方で,1)S病院よりもH病院のほうが調査時間中の患者の歩数が多く、よりリハビリ効果が得られていること、また、その違いが個室やレストランの位置など、病棟の空間構成の違いに起因すること,2)S病院における患者の歩数から,病院内のリハビリ時間と同等の歩数が,個室内およびレストランへの移動により確保できていること,3)居室内の運動強度は,個室を整備したS病院において高いこと,4)アンケート結果からも,個室の確保が多様な生活行動を促し,その結果,歩数や運動強度が向上すること,の大きく4点が明らかになった.以上から,回復期リハビリテーション病院においては,生活行動を促す環境設定の導入がリハビリの観点からも有効なことを示すことが出来た.
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