ターミナルケアを行う上での空間的課題や、介護方法・介護体制の課題を把握することを目的として、熊本県下の、ターミナルケアの経験のある、もしくは、ターミナル期を迎えた入居者の存在するグループホームに対して、ターミナルケアの実施の状況や、その当時の入居者の暮らしの状況、及び、空間の現状に関するヒアリング調査、家具採集を行った。調査期間は2009年9月である。 ターミナルケアを行う上で、大きな課題となるのは、特に、新規に建設されたグループホームである「新築型」では、入居者の個室9室と、居間・食堂といった共用空間という、中・軽度の入居者が生活する上で必要最小限の空間構成であることから、ターミナル期を迎えた入居者の、緊密な見守りを行う上での見守りにくさ、看取りに参加する家族の寝泊まりの場所や、休憩の場所といった空間、「余地室」を確保しにくいといった課題が見られる。また、ターミナル期を迎えた入居者を対象とした居室、言わば「看取り部屋」を確保できている事例では、スタッフが日中常駐する共用空間に面する居室をその部屋に当てており、ターミナル期を迎えた入居者に対する頻繁な見守り、行き来に対する課題は克服できているものの、入居者全体の介護度・身体状況が重度化している場合、当初看取りを予定していた入居者以外が、ターミナル期を迎える場合があり、看取り部屋への居室の変更が難しく、そのため、看取りのための見守りや介護がしにくいといった課題も生まれている。 今年度の調査では、こうした「看取り部屋」の確保の必要性や、ターミナル期を迎えた入居者の個室変更の有効性と課題、複数の入居者がターミナル期を迎えた場合での対応の仕方などの課題が明らかとなった。次年度では、ターミナル期の入居者の個室と他の入居者の過ごす場所との空間的関係や、スタッフの介護動線、見守りの中心となる空間との関係といった、ターミナル期を迎えた際のグループホーム全体の空間の特性、暮らしの特性を明らかにし、中・軽度から重度、さらにターミナルまでを受け入れるグループホームの空間的計画手法を検証する。
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