研究概要 |
本研究では,景観規制を強めていく際に実施された合意形成プロセスについて英国の先進的な事例から調査した.まず,英国では,案件ごとに行われている個別審査に強い影響を与えている組織として,イングランドにおいてはCABE(英国建築都市環境委員会)が,ウェールズにおいてはDesign Commission for Walesがあることがわかり,実際にDesign Commission for Walesが実施しているDesign Reviewにオブザーバーとして出席することでDesign Reviewの仕組みを理解し,次に,出席者にインタビュー調査を行うことでこの仕組みに関する関係者の意見や考えを収集した.さらに,Design Reviewのレポートが景観に与える影響を検討した.その結果,個別に審査された過程をレポートとして公開するシステムが景観の質の向上に繋がっていることが推察された.特に景観に対する住民の評価には大きな個人差があるため,デザインレビューのレポートが住民評価の形成に大きな影響力を持つことが推察された.このように質の高い景観に対する住民評価を形成する仕掛けとしてDesign Reviewの有効性が把握された. 一方,景観形成と景観規制の強化の関係を調査するため,我が国において景観規制を強化してきた倉敷川畔伝統的建造物群保存地区の発展過程,伝統的建造物保存審査会の議事録,山陽新聞の記事などを把握した.その結果,伝統的建造物保存審査会の役割,新聞の記事,合意形成との関係が把握された.以上,英国のDesign Reviewの仕組みと効果,我が国における景観形成と景観規制の強化の関係を分析した.
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