本年度については、極めて情報の乏しい地域における重度身体障害者の生活環境に関する基礎的調査を行った。まず、独自のグループホーム制度事業を行う横浜市において、グループホーム事業者と行政担当者にヒアリング調査を行い、現状と課題を抽出した。結果、横浜市独自のグループホーム制度は法定のグループホーム制度に移行しつつあること、また法定のグループホーム制度では、ホームヘルプ利用などの面から制約が増加することが明らかになった。また、江東区にて地域生活を行う障害当事者の住宅(グループホーム2件)を訪問し、建築環境についての観察調査、ならびに障害当事者に対する簡単なヒアリング調査を行った。結果、重度身体障害者に限らず様々な程度の(知的・精神を含めた)障害者によるグループホームの可能性と、その場合は住宅改修を小規模にとどめることができる(例えば必ずしもエレベータを必要としないなど)ことが明らかになった。 加えて、現行制度(障害者自立支援法)にもとづくグループホーム・ケアホームの実態を把握するため、身体障害者入所授産施設からケアホームへと、4人部屋から個室へ増改築を行った事例(入居者数約40名)に着目し、その前後において入居者の行動や居場所の嗜好がどのように変化したのか、移行前後の2日づつ、計4日間において、起床から就寝まで、10分間隔での観察調査を行った。本事例では重度身体障害者は1名しか存在しなかったが、個室化が高く評価されていることが判明した。
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