今年度は限界集落における空き家の実態、および集落移転に関する基礎的調査を行った。 山梨県早川町において、限界集落を中心に各集落を視察し、2009年度現在の空き家の実態を把握した。さらに地元のシンクタンクである日本上流文化圏研究所の研究員にヒアリング調査を行い、空き家利活用の実態を把握した。 早川町では過疎・高齢化が加速度的に進み、同時に高齢者単身世帯の割合や空き家率が上昇しており、今後数年以内に地域の維持が困難になる集落が多数存在する現状が明らかとなる一方で、移住者に向けた「空き家のお試し暮らし」施策など、地域再生に向けた取り組みが進められている現状も明らかとなった。 次に昭和40年代に集落再編を行った地域の事例として、岩手県西和賀町旧沢内村長瀬野集落を調査した。集落移転を記録した過去の文献が多数存在するためそれらを全て収集した。さらに移転前、移転後の集落を視察し、移転に関わった西和賀町副町長および森林組合長へのヒアリング調査を行い、行政側、地域住民側それぞれの視点から集落移転の実態を把握した。 国からの補助金と住民の自己負担の割合など、移転費用の詳細や、集落移転計画に地域住民同士が合意するまでに、かなりの時間を要した過程、さらには一部元の集落にとどまる住民がいるなど、困難を伴う歴史があったことなどが明らかとなった。 今後、得られた基礎資料を基に、空き家と周辺環境の関係性や、集落の社会的・空間的解析を進めていく必要があり、日本各地の中山間地域における集落再編に向けた集落空間管理のあり方を提示していく必要がある。
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